AI表情解析が捉える若年層の心の兆候:抑うつ予備群の非言語的サインを可視化

編集者: Liliya Shabalina

人工知能(AI)技術が、これまで捉えにくかった若年層の心理状態を非侵襲的に把握する新たな道筋を切り開いています。早稲田大学の研究グループは、この技術を応用し、初期の抑うつ傾向を示す微細な顔の表情パターンを検出することに成功しました。この研究は、個人の表面的な振る舞いの奥にある内面の動きを映し出す鏡として機能する可能性を秘めています。

分析対象となったのは、大学生らが自己紹介のために短時間録画した動画です。研究チームはAI表情解析ツールであるOpenFace 2.0を駆使し、特定の表情筋の動き、特に内側の眉の上昇や、唇や口元の特有の動きが、抑うつ症状の度合いと相関していることを明らかにしました。これらの非言語的な合図は、周囲の仲間からは「表現が乏しい」「不自然だ」と受け取られがちな傾向があります。この重要な発見は、2025年8月22日に学術誌『Scientific Reports』で公表されました。

この技術的進展は、単に個人の状態を把握するに留まらず、医療機関の診断基準に達していない段階、すなわち「サブスレッショルドうつ(うつ病予備群)」の状態変化を捉える可能性を提示します。AIによる客観的な数値分析と主観的な印象評価を組み合わせることで、まだ専門家の支援を求めていない人々の心の揺らぎを可視化する道が開かれます。実際に、ドイツの研究では、コンピュータービジョンがうつ病だけでなく、統合失調症などの精神疾患の程度まで正確に区別できる可能性も示唆されており、客観的指標の導入が支援のあり方を根本から変革する力を持つことが期待されます。

若年層におけるメンタルヘルスの課題は、現代社会において看過できない現実です。パーソル総合研究所の調査によれば、過去3年以内にメンタルヘルス不調を経験した正規雇用者のうち、20代の割合が約4割と突出しており、不調が離職に直結しやすい状況が示されています。また、多くの管理職が部下の対応に精神的・業務的な負担を感じており、早期の相談を望む声も高いのが現状です。

このAIアプローチは、教育現場や職場といった日常的な環境において、心の健康指標を継続的に把握する手段を提供し、より早い段階での支援へと繋げる大きな機会を創出します。個々人が持つ内なる状態が外的な表現として現れる様を捉えることは、他者への理解を深め、共助の輪を広げるための重要な手がかりとなり得ます。表面的な出来事に囚われるのではなく、その背後にある個々の調和の必要性に目を向けることが、より安定した集団の基盤構築に繋がるでしょう。

ソース元

  • globo.com

  • Waseda University

  • O Globo

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