北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が中国を訪問した際、長女のキム・ジュエ氏が同行したことは、彼女が将来の指導者として育成されているとの見方を一層強めるものとなりました。この訪問は、キム・ジュエ氏にとって北朝鮮国外では初めての公の場への登場であり、特に北京で開催された第二次世界大戦終結80周年記念の軍事パレードへの出席は、国際社会に大きな関心を集めました。
この重要な外交舞台でのキム・ジュエ氏の存在は、北朝鮮の権力継承に関する憶測に火をつけました。韓国の諜報機関は、彼女の公の場への露出増加を、体制内での地位を戦略的に高める動きと見ています。アナリストたちは、こうした高位のイベントへの参加が、彼女が将来の指導者として準備されている兆候であると分析しています。
今回の中国訪問は、北朝鮮と中国との関係強化を示すものでもありました。金正恩総書記は、習近平国家主席をはじめとする中国の指導者たちと会談し、両国間の協力関係を確認しました。その中で、キム・ジュエ氏が父と共に公式行事に参加したことは、中国側が北朝鮮の権力構造、特に世襲による指導体制を認識し、尊重していることを示唆しています。一部の専門家は、これを「後継者の申告式」と捉えることも可能であり、中国が北朝鮮の4代世襲を事実上承認したとの見方もあります。
キム・ジュエ氏の公的な活動は、2022年11月に新型大陸間弾道ミサイル「火星17」の発射実験を視察した際に初めて確認されて以来、増加傾向にあります。特に、軍事パレードや軍事訓練など、国家の威信に関わるイベントへの父との同行は、彼女が単なる同行者以上の役割を担っていることを示唆しています。報道によれば、彼女は式典において、母である李雪主(リ・ソルジュ)氏や叔母である金与正(キム・ヨジョン)党副部長よりも上位の立場にあるかのように振る舞っており、後継者としての地位を固めつつあるとの見方が強まっています。
北朝鮮の権力継承は、金日成から金正日、そして金正恩へと続く世襲制によって特徴づけられてきました。この親子三代にわたる権力継承は、社会主義国家としては異例の形態であり、体制の長期的な持続を可能にした要因の一つとされています。キム・ジュエ氏の登場は、この世襲の連鎖が続く可能性を示唆しており、北朝鮮の政治的安定性や地域情勢に与える影響は、今後も注視されるべき点です。彼女の今後の動向、特に父である金正恩総書記の健康状態や、彼女自身の政治的経験の蓄積が、北朝鮮の未来を占う上で重要な要素となるでしょう。