ビートルズのポール・マッカートニーが、ジョン・レノンの未発表デモ音源から「Free as a Bird」と「Real Love」の2曲をAI技術を用いてリマスターし、新たな命を吹き込むことが明らかになりました。これらの楽曲は、2025年11月26日にディズニー+で配信される「ザ・ビートルズ・アンソロジー4」に収録される予定です。このリリースには、ドキュメンタリーシリーズの新エピソードも含まれ、同時に「ザ・ビートルズ・アンソロジー」の書籍の25周年記念版も発売されます。
マッカートニーは、AI技術を駆使してレノンのボーカルをデモテープから抽出し、クリアな音源として復元するプロセスについて説明しています。この技術は、ピーター・ジャクソン監督によるドキュメンタリー「ザ・ビートルズ:Get Back」で用いられたものと同様で、過去の音源を現代の技術で蘇らせる試みとして注目されています。AIによるボーカル分離技術は、レノンが亡くなる前に録音したデモテープから、彼の歌声をクリアに抽出することを可能にしました。この技術は、1990年代に「Free as a Bird」や「Real Love」が初めてリリースされた際に利用された技術よりもさらに進化しており、ジェフ・リンがこれらの楽曲のリミックスを手がけています。
「ザ・ビートルズ・アンソロジー」プロジェクトは、バンド自身の言葉でその歴史を語るという画期的な試みであり、1990年代半ばに初めて展開されました。今回発売される「アンソロジー4」は、このシリーズの音楽コレクションを拡張するもので、過去の未発表デモやセッション録音、レア音源を含む13曲が新たに収録されます。また、書籍版の25周年記念エディションは10月14日に発売され、バンドのメンバーや関係者の貴重な証言、1,300点以上の写真や資料が収められています。ドキュメンタリーシリーズは11月26日から配信が開始され、未公開映像を含む新たなエピソードが追加されています。
一方で、マッカートニーはAI技術の音楽制作への応用について、その可能性を認めつつも、著作権やアーティストへの報酬といった側面での懸念も表明しています。AIが生成した音楽が市場に溢れることで、若手アーティストのキャリア形成が困難になる可能性を指摘し、技術の適切な利用と規制の必要性を訴えています。これは、AIが生成した音楽の著作権に関する法的な議論や、人間の創造性が持つ独自性への問いかけが深まる中で、音楽業界全体が直面している課題を浮き彫りにしています。
今回のビートルズの新たな取り組みは、最先端のAI技術が過去の遺産に新たな価値を与え、ファンに音楽の新たな側面を提供する一方で、音楽制作における人間の役割や権利について、より深い考察を促すものと言えるでしょう。これは、時代を超えて響き続ける音楽の力を、テクノロジーの進化と共に再発見する機会を提供します。