1988年に公開されたスタジオジブリのアニメーション映画「火垂るの墓」が、Netflixを通じて世界中の視聴者に届けられています。この作品は、第二次世界大戦下の日本を舞台に、空襲で全てを失った少年清太と幼い妹節子の過酷なサバイバルを描いています。
「火垂るの墓」は、その強烈な反戦メッセージと感動的な物語で、公開以来、批評家から一貫して高い評価を得ており、Rotten Tomatoesでは100%という驚異的な支持率を記録しています。批評家たちは、戦争がもたらす人間的な犠牲の悲しみと、その中で描かれる兄弟の絆の美しさを称賛しています。
この映画がNetflixのグローバル配信（日本を除く）に加わったことは、日本アニメーションがより多くの人々に触れられるようになるという点で、非常に意義深い出来事です。これにより、悲劇の中にあっても失われることのない兄弟愛の証である高畑勲監督の不朽の名作が、新しい世代の視聴者にも響き続けることが保証されます。
1945年3月、神戸はアメリカ軍による無差別爆撃で大きな被害を受けました。清太と節子は母親を失い、親戚を頼りますが、やがてその場を離れ、古い防空壕で二人だけの生活を始めます。食料の確保に苦しみ、日々の生活に追われる中で、清太は妹を守ろうと必死になりますが、戦争の現実と飢餓は容赦なく彼らに襲いかかります。この映画は、戦争が子供たちの純粋な心と生活をいかに破壊するかを、痛ましいほどリアルに描き出しています。
高畑監督自身も岡山大空襲の経験者であり、その体験を作品に反映させようとしました。原作者の野坂昭如氏も、映画化された作品を見て、高畑監督が当時の神戸での体験を忠実に再現したことに感銘を受けたと語っています。映画は、戦争の悲惨さだけでなく、極限状態における人間の尊厳や、兄弟の間に芽生える深い愛情も描いています。この作品は、単なる反戦映画としてだけでなく、人間の絆や生きる意味を深く問いかける普遍的な物語として、今なお多くの人々の心に深く刻まれています。2024年9月には、Netflixの「非英語映画トップ10」で7位にランクインするなど、世界的な注目を集めています。これは、公開から36年を経てもなお、「火垂るの墓」が持つ感動的な力と、戦争の記憶を風化させないことの重要性を示唆しています。