シドニーは2025年8月21日時点で降水量345ミリメートルを超え、過去27年間で最も雨の多い8月を記録しました。これは月平均降水量79.9ミリメートルを大幅に上回る記録的な数値です。
この降り続く雨は、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州全域で広範囲な洪水を引き起こしています。ニューサウスウェールズ州中北部沿岸には厳重な洪水警報が発令されており、タムワース、アーミデール、モリーなどの地域では深刻な洪水が発生しています。ニューサウスウェールズ州緊急サービス(SES)は、洪水救助を含む数百件の事案に対応しました。8月20日には、シドニーで24時間あたり82.4ミリメートルの雨が降り、2007年以降で最も雨の多い8月の1日となりました。
この異常な降雨パターンは、タスマン海上の通常より南に位置する高気圧システムが湿った空気を沿岸に送り込んだこと、そしてインド洋の負のダイポールモード(負のIOD)や沿岸の海水温の上昇などが複合的に影響していると考えられています。これらの気象条件が、湿った空気をオーストラリア東海岸に運び込み、長引く雨の原因となっています。
ニューサウスウェールズ州緊急サービス(SES)は、州内で発生した多数の洪水や悪天候の事案に対応するため、週末にかけて3,600件以上の通報を受け、2,092件の事案に対応しました。これには25件の洪水救助が含まれており、タムワースやガンネダーなどの地域では主要な洪水警報が発令され、住民に避難が呼びかけられました。現在も多くの地域で洪水警報が継続しており、州全体で627件以上の事案に対応しています。
この状況は、道路の損壊、公共交通機関の混乱、保険金請求の増加、そして倒木や電線の倒壊リスクの増大など、地域経済にも影響を与えています。専門家は、このような異常気象が今後も続く可能性を示唆しており、住民に対しては引き続き警戒を呼びかけています。