2025年7月、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドを襲った2週間にわたる熱波は、人間の活動による気候変動の影響で、気温が約2℃上昇し、発生確率が10倍になったと、ワールド・ウェザー・アトリビューション（WWA）の分析で明らかになりました。この異常な暑さは北欧諸国に深刻な影響を与えました。
フィンランドでは、記録的な猛暑が22日以上続き、30℃超えの気温が観測されました。ノルウェーでも、北極圏内で13日間にわたり30℃を超える日が記録され、これは例年の7月の気象パターンから大きく逸脱するものです。スウェーデンでは、一部地域で10日連続の熱帯夜（夜間も気温が20℃を下回らない）を記録しました。WWAの研究者たちは、これらの極端な気温は気候変動の直接的な結果であり、公衆衛生システムやインフラに混乱をもたらしていると強調しています。特に、フィンランドのヨリトルニオでは、26日連続で25℃を超える日が観測され、これはヨーロッパ北部では前例のないことです。ノルウェーのストルフォルスヘイでは、北極圏のすぐ南に位置しながらも、7月12日から24日までの12日間連続で30℃以上の気温を記録しました。
この熱波は、医療システムにも大きな負担をかけました。スウェーデンでは熱中症による入院患者が急増し、一部の病院では手術を延期せざるを得ない状況が発生しました。また、屋外での水泳の増加などにより、フィンランドで少なくとも28人、スウェーデンで31人、ノルウェーで8人が溺死したと報告されています。さらに、暑さで乾燥した土壌や植生は、ラップランドを含む地域で多数の山火事を引き起こしました。バルト海沿岸やフィンランドの湖では、高温により異常に広範囲な藻類の大量発生も確認されています。
野生生物への影響も深刻で、特に有名なトナカイが暑さから逃れるために町に現れる姿が目撃されました。ノルウェーでは、トンネル内でトナカイに遭遇する危険性についてドライバーに警告が出され、フィンランドではトナカイの死亡も報告されています。これは、1,000年以上前からこの地域でトナカイを飼育してきた先住民サーミ族の生計にも影響を与えています。
WWAの研究手法は、観測データ、気候モデルの分析、査読された研究、現場報告を組み合わせたもので、気候変動が異常気象に与える影響を評価するために用いられています。この分析によると、現在の1.3℃の世界的な温暖化レベルでは、このような熱波は50年に一度程度発生すると考えられますが、気候変動がなければ極めて稀な現象であったとされています。研究者たちは、化石燃料の使用を急速に削減しない限り、2100年までには同様のイベントが5倍頻繁に発生し、さらに1.4℃暑くなる可能性があると警告しています。
この分析結果は、化石燃料の燃焼が地球温暖化を促進する温室効果ガスを放出し、より極端な熱波を引き起こしていることを示しています。北欧諸国は、寒冷な気候に適応したインフラや生活様式を持っていますが、今回の熱波は、これらの地域が気候変動による前例のない暑さに直面している現実を浮き彫りにしました。適応策の強化と、気候変動緩和に向けた迅速な行動が、将来の同様の事態に備える上で不可欠です。