2025年8月18日、ムンバイは記録的な豪雨に見舞われ、都市機能が広範囲にわたり麻痺しました。インド気象局（IMD）は極めて激しい雨を予測し、「レッドアラート」を発令しました。サントクルーズ観測所ではわずか3時間で91.5mmの降雨を記録し、アンデリやバンドラなどの主要地域で深刻な浸水が発生しました。この未曾有の降雨は、都市のインフラに多大な影響を与え、市民生活に混乱をもたらしました。
交通網は壊滅的な打撃を受けました。主要道路であるウェスタン・エクスプレス・ハイウェイでは、水没した区間により車両の通行が著しく遅延し、深刻な交通渋滞が発生しました。空港へのアクセスも困難になり、航空会社は旅行者への注意喚起を発令しました。鉄道網も例外ではなく、中央線と西部線のローカル線は線路への浸水や信号トラブルにより、15分から20分程度の遅延が発生しました。これにより、多くの通勤客が影響を受けました。
都市のインフラの脆弱性も露呈しました。アンデリ・サブウェイやロクハンドワラ・コンプレックスなどの低地地域では、膝丈の水位に達するほどの浸水が発生し、一部地域では地下鉄の通行が一時閉鎖されました。さらに、この激しい雨の中、建物の階段の一部が崩落し、3名が負傷するという事故も発生しました。この事故は、老朽化したインフラが自然災害に対してどれほど脆弱であるかを示しています。
この状況を受け、ブリハンムンバイ市（BMC）は午後の授業から全ての学校と大学を休校とすることを決定しました。また、市民に対しては、不要不急の外出を控えるよう強く呼びかけました。IMDは、今後数日間も同様の激しい雨が続く可能性が高いと警告しており、都市機能の回復には時間がかかる見込みです。この出来事は、都市計画における気候変動への適応策の重要性を改めて浮き彫りにしました。例えば、2025年のモンスーンシーズンにおける累積降水量は、両観測所ともに既に1,000mmを超えており、これは例年を上回るペースです。特に、8月17日までにコラバ観測所では1,257mm、サントクルーズ観測所では1,764mmの降雨を記録しています。これは、都市の排水能力やインフラ整備が、気候変動による極端な気象現象に追いついていない現状を示唆しています。このような状況は、都市のレジリエンスを高めるための、より抜本的な対策の必要性を訴えかけています。