インドネシアのスラウェシ島で、100万年以上前のものと推定される石器が発見され、この地域における初期人類の活動時期に関する理解を塗り替える可能性が出てきました。この発見は、人類の進化と拡散の歴史における重要な一歩となる可能性があります。
発見された石器は、南スラウェシ州ソッペン県ウジュン村近郊のカリオ遺跡で、約104万年から148万年前のものと年代測定されています。チャートを原料とし、鋭利な刃を持つパーカッションフレーク技法で製作されたこれらの石器は、ウォレス地域(アジアとオーストラリアの間にある島嶼群)における、これまでに知られている最古の人類の痕跡となります。石器の製作者は特定されていませんが、ホモ・エレクトス、あるいはスラウェシ島に孤立して進化したその子孫である可能性が推測されています。この発見は、フロレス島やルソン島など、他の東南アジアの島々における同時期の初期人類の存在を示す証拠とも一致しています。
この発見の特筆すべき点は、初期の人類がどのようにしてこれらの島々に到達したのかという疑問です。当時のスラウェシ島はアジア本土から海によって隔てられており、サメやワニ、強い海流が存在する海域でした。ボートなどの航海技術を持たない初期の人類が、どのようにしてこの海を渡ったのかは依然として謎に包まれており、自然の「いかだ」に乗った漂着の可能性などが考えられています。この発見は、人類がどのようにして海を越え、新たな土地に進出していったのかという、人類の移動と適応能力に関する理解を深めるものです。アダム・ブルーム博士(グリフィス大学)は、この発見を「パズルの重要なピース」と評していますが、スラウェシ島に生息していた人類の正体は依然として謎であると指摘しています。今後のさらなる研究と発掘により、これらの初期の住民の正体や、彼らの移動経路についての詳細が明らかになることが期待されています。