タイ王国財務省は、暗号資産（仮想通貨）取引所KuCoinと提携し、世界初の公募型トークン化国債「G-Token」を発行する革新的な取り組みを進めています。このプロジェクトは、ブロックチェーン技術を活用して政府債券市場へのアクセスを民主化し、個人投資家にとってより身近なものとすることを目指しています。
G-Tokenは、タイの公的債務管理法に基づき発行される「政府デジタル債券」であり、タイ財務省が元本と利払いを保証する政府保証付きの金融商品です。これは、実世界資産（RWA）のトークン化という点で、従来の金融とデジタル資産の融合を示しています。初回発行額は50億バーツ（約1億5,300万米ドル）に上り、最低投資額はわずか1,000バーツ（約30米ドル）と、従来の国債市場に比べて大幅に低い設定となっています。これにより、これまで機関投資家や富裕層に限られていた政府債券への投資機会が、一般の個人投資家にも開かれます。
このイニシアチブにおいて、KuCoinは主要なパートナーとして、そのタイ国内ライセンス子会社であるKuCoin Thailandを通じて、G-Tokenの募集、償還、および取引のサポートを行います。さらに、XSpring Digital、SIX Network、Krungthai XSpringといった現地のパートナー企業とも連携し、プロジェクトの推進にあたります。将来的には、規制当局の承認を得た上で、KuCoinのグローバルプラットフォームへの上場も検討されており、国際的な投資家へのアクセス拡大も期待されています。
タイのピチャイ・チュンハバジラ副首相兼財務相は、G-Tokenは新しい形態の政府債務や仮想通貨ではなく、既存の政府債券資産のデジタル変革であると説明しています。KuCoinのBCウォン最高経営責任者（CEO）は、同社が伝統的金融と仮想通貨の世界を安全かつ革新的なソリューションで橋渡しすることにコミットしており、このプロジェクトが金融イノベーションの推進とデジタル資産の普及を促進する上で重要な役割を果たすと述べています。
このG-Tokenの発行は、タイの財政インフラにおける重要な一歩であり、政府がどのように資金調達を行うか、そして国民がどのように政府債券に投資できるかについて、世界的なモデルケースとなる可能性があります。この取り組みは、ブロックチェーン技術の透明性と効率性を、政府債券の信頼性と組み合わせることで、金融市場の新たな地平を切り開くものとして注目されています。タイの債務管理計画FY2025の一環として進められており、同国の債務戦略全体の一部を成しています。このデジタル化されたアプローチは、タイが将来的にデジタル金融分野でリーダーシップを発揮していく上での重要な布石となるでしょう。