オーストラリアでは、飼い猫が固有の野生生物に深刻な影響を与えており、毎年推定15億匹以上の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、そして11億匹以上の無脊椎動物が猫によって命を落としています。特に、絶滅の危機にあるウェスタンリングテイルポッサムのような固有種は、猫の捕食活動により大きな脅威にさらされています。
この問題に対処するため、西オーストラリア州バッセルトン市にあるバッセルトン動物病院は、地域初の屋内型猫用安全スペース「キャティオ」を設置しました。これは、猫が安全に屋外の環境を楽しめるようにすると同時に、野生生物を保護することを目的とした、ジオキャッチとの協力による画期的な取り組みです。キャティオは、猫の福祉と野生生物の保全の両方にメリットをもたらし、猫は安全な空間で屋外の刺激を体験でき、飼い主は猫が安全であることを確認できます。
この取り組みは、猫の囲い込みに関する法律への関心の高まりとも連動しています。オーストラリアの地方自治体の78％が、ペットの猫が在来動物に与える影響を軽減するために、猫の囲い込みに関する法律に関心を示しています。これは、放し飼いの猫が年間791匹の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、そして371匹の無脊椎動物を捕食するという調査結果に基づいています。
バッセルトン動物病院の院長であるリチャード・ルーカス博士は、猫の福祉に対する関心の高まりを指摘しています。彼は、放浪中に怪我をする猫や、放浪する猫によって傷つけられる野生生物を多く見てきました。適切なエンリッチメント（遊び道具や植物など）があれば、キャティオ内で猫は幸せに暮らすことができると述べています。このキャティオは地元の建設業者ジェイソン・マンスフィールド氏によって設計・設置されました。
ジオキャッチは、キャティオを設置した飼い主に対し、200ドルの補助金を提供しており、バッセルトンではこの制度の利用が非常に進んでいます。開始から最初の6か月で、すでに15件のキャティオが設置されました。このプログラムは、絶滅危惧種のウェスタンリングテイルポッサムをはじめとする在来種の保護を目的としています。
キャティオは猫に安全な屋外環境を提供し、野生生物への影響を最小限に抑えます。ジオキャッチのウェブサイトでは、このプログラムに関する詳細情報が提供されています。この革新的なアプローチは、猫の飼い主が責任あるペットの飼育を実践し、地域の生態系を守るための重要な一歩となります。オーストラリア全土で、猫の囲い込みに関する法律や補助金制度の導入が進んでおり、猫と野生生物が共存できる社会を目指す動きが加速しています。