シドニー・スウィーニー主演「クリスティ」、トロント国際映画祭でオスカー候補として注目を集める

シドニー・スウィーニーが、伝説的な女性ボクサー、クリスティ・マーティンを描いた伝記映画「クリスティ」で、キャリアにおける新たな境地を切り開いています。デヴィッド・ミショッド監督による本作は、2025年9月5日に開催されたトロント国際映画祭（TIFF）でプレミア上映され、批評家から絶賛を浴び、スウィーニーのオスカー候補としての呼び声が高まっています。

スウィーニーは、この役作りのために約13～16キログラムの増量という驚異的な肉体改造を遂げました。高カロリーな食事とウェイトトレーニング、キックボクシングを組み合わせた1日2回の過酷なトレーニングをこなしたとのことです。彼女自身、「強く、エンパワーされた」と感じており、この完全な変貌を「夢が叶った」と語っています。批評家からは、キャリアにおける最も成熟し、説得力のある演技だと称賛されており、バラエティ誌は「スペクタクル」と評しています。

ミショッド監督がメガホンを取った本作は、マーティンの人生における複雑でしばしば悲惨な側面、特にトレーナーであり夫であったジム・マーティンとの関係におけるドメスティック・バイオレンスや性差別的な支配といったテーマを深く掘り下げています。ボクシングシーンの迫力はもちろん、マーティンが直面した人生の困難さを反映した大胆なシーンも含まれています。ジム・マーティン役を演じたベン・フォスターの演技も批評家から高く評価されています。

TIFFでのプレミア上映は、「クリスティ」を今後のアワードシーズンにおける有力候補として位置づけています。多くの批評家や業界関係者は、TIFFがオスカーキャンペーンの出発点となることが多いと指摘しており、スウィーニーの演技に対する熱狂的な反響は、彼女が有力な候補であることを示唆しています。ニューヨーク・タイムズの映画アワード担当コラムニスト、カイル・ブキャナン氏は、スウィーニーのオスカー獲得の可能性について、「トロントで『クリスティ』は驚異的な反響を得ており、彼女のオスカーへの道のりは非常に有望だ」とコメントしています。

「クリスティ」は、2025年11月7日にブラック・ベア・ピクチャーズ配給で劇場公開される予定であり、アワードシーズンの真っ只中に位置づけられています。TIFFでの批評的な成功とスウィーニーの変貌的な演技は、その公開に向けて大きな期待を集めています。逆境に立ち向かうマーティンの回復力と、スウィーニーの献身的な演技が、観客やアワードの審査員に響くことが予想されます。

本作は、ウェストバージニア州の小さな町出身で「炭鉱夫の娘」と呼ばれたマーティンが、女性ボクシング界の著名な人物へと上り詰めるまでの道のりを描いています。彼女のキャリアは多くの功績で彩られていますが、夫でありトレーナーでもあったジム・マーティンからの深刻な個人的な苦悩、特に虐待によって影を落としていました。映画はこれらの困難な側面を避けずに、歴史的な正確さを目指しながら、マーティンの強さと回復力を描いています。ミショッド監督とミラ・ファウルクスによる脚本は、センセーショナルにすることなく、マーティンの人生の厳しい現実を伝えることで、その繊細なテーマを巧みに扱っていると評価されています。マーティンの人生の旅を忠実に描こうとする本作の姿勢が、批評的な称賛の鍵となっています。